建築構造家の見解

建築構造家・金箱温春氏が沖縄少年会館を見学され、図面と目視による構造体の状況を判断して頂きました。
構造専門家のコメント


【要点】

  • 耐力度調査の結果は耐震性という観点から言うと不足している。
  • 現在の状態は致命的ではないので、今の段階で耐震補強する方法が技術的にはある。
  • 特徴的な外観を活かすなど、改修補強方法の選択肢は複数ある。
  • 新築より改修の方が安価であり、改修後30年は問題なく利用出来る。
  • 公共建築を耐震改修する際は文化的・歴史的価値を広く認識する必要がある。

【コメント書きおこし】

金箱と言います。構造設計をやっているのですが、耐震補強とか耐震改修もかなり手掛けております。ちょうど今から30〜40年位前に建てられた建物が、やはり東京でも耐震性が無いということで解体されて新築される事が今までは多かったのですが、環境の問題などを考えるとむやみに廃棄物を出してはならないこともあり、最近は耐震改修に関してクライアントも含めニーズは高まってきています。具体的にはオフィスビルや商業ビルですと30〜40年位前の建物を耐震補強して使っていくという事例が増えてます。それからもう少し古い建物で言うと、昭和の初期に建てられた公共建築があるんですけど、かなり中性化が進んでましたが、非常に文化的な価値があるので、行政の方からなんとか残したいという話があり、耐震補強と中性化を抑止することを行い、きちんと建物として機能的に使えるようにしています。こういうことは日本のあちこちで行われているので、古くなった建物をなんでもでもかんでも壊せばいいという状況ではないと思います。

この久茂地公民館(沖縄少年会館)は以前に(耐力度調査の)書類をざっと見たのですが、耐震性という観点から言うと不足しています。短手方向は両側に壁があるんですけど、柱型がついてないような壁になっているというのがありまして、ただ壁があるおかげでそこそこ強度はあるのですが、問題は長手方向が特にA通りという前面側はほとんど中間の梁が無いようなものとなっている。そういう意味で言うと耐震性が無いと言われれば無い。ただし耐震性が無いというものはいくらでもリカバリーする手段があり、それは対応できると思います。あとは耐力度調査の中では特に保存度の点数が低い。それは45年経っているということと、中性化が平均して3〜4cm進んでいるということと、局所的に鉄筋が出てるということがある。それもただ今日見た状態で言えば致命的ではないので、今の段階で中性化を抑止するというような方法が技術的にはある。ですから技術的に言うと現在の状況はもちろん安全ではないのでこのまま使い続けるのは好ましくないと思うんですけども、耐久性・耐震性の観点からリカバリーすることは出来る。

(耐震改修は)公共建築の場合は明らかに文化的意味があると思ってやっている例が多いです。重要なのはこの建物をなぜ残すかという意味と、残したいと思っている人たちがどれぐらい運動を盛り上げていくかという事です。そういう条件が揃うと自ずとその費用がついてくるという気がします。今日の建物(沖縄少年会館)は、もし耐震補強するとすれば外観が(特徴的なので)きっと大事でしょうから、長手方向については内部にどこか鉄骨フレームをいれるとかその様な事は出てくるかと思います。短手方向は両側の壁が活用出来ないかとか、いずれにしても改修する際にどこかに手を入れますから、大事にしたい残したいとこはどこか、変えてもいいとこはどこかという意識で考えられたらいいと思います。選択肢は補強の仕方含め色々あります。

(コンクリートに見えるひび割れに対して)コンクリートそのものではなくて、コンクリートの外側に塗られたモルタルのひび割れがかなり目立っている。コンクリートは水とセメントと砂利で作られておりまして、硬化する時に水分が蒸発するためどうしてもひび割れがつきもので、その中に有害なものとそうでないものがあるんですけど、特殊樹脂を充填すれば強度的には問題は無いです。一番厄介なのは鉄筋が表面に出てきてるもので、特に庇などに目立ちました。あの庇がこの建物で印象的な所だと思うんですが、だいぶ手を加えなければならない気がします。

(活用方法について)沖縄の人達だけでなく、沖縄の建築を理解する全国の人達が文化的・歴史的価値があると感じることで、沖縄にとって観光資源になり、観光客も立ち寄れる様な施設活用の様なものが出来ると良いのではないだろうか。(中略)日本の文化財行政も変わってきていて、いままで大事に保存していたものを、最近は人を中に入れて「保存活用」しています。展示室にしてもいいし、ちゃんと食事をしてもいい。そこに観光客がきてもいい空間だなと感じるという様なやり方をしないと、文化財はただただ古いものとしか思われない。(中略)例えば最近東京だと、保育園はまだまだ圧倒的に足りないので、リノベーションする際、一部に保育園を付け加えると地元の人達はすごく喜ぶんです。地元の人達が喜ぶ事は行政も協力しやすいので、周りの住んでいる人達をリサーチして、声が上がるようなことするとよいと思います。

(費用について)一般的には新築より改修の方が安いです。耐震改修だけでなく、設備もやり変えて、内部の部屋のつくりを変えたとしても新築の半額から7割ぐらいを目標にしています。それからさらに30年ぐらいは問題なく利用できると思います。

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